Gallery -Note 漫画家畑中純さんの思い出話

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畑中純さんが亡くなった。言葉がない。僕にとって畑中純は,70年代後半本当に熱心に読んでいた『まんだら屋の良太』の作者だ。連載されていた週間漫画サンデーを仕事帰りに高田馬場の西武新宿線のホームの売店で買うのが楽しみだった。ある時いつものように買って電車に飛び乗ってページを開くと、読んだことのあるページ、漫画サンデーはいつも同じような表紙、なんと先週のいちど読んだ週刊誌をまた買ってしまったのだ。電車は走り出しているしなんだか虚しくページをぱらぱらとやったのを今でも忘れずに覚えている。今なんでもすぐに忘れてしまうのにこんな事をいつまでも執念深く覚えている。これは良太の新作を早く読みたいという気持ちが強かっただけに今も残っているのだろう。そんな作家畑中純さんにギャラリーをやり始めた1年目の2005年の4月、是非個展を開いてもらいたいとご自宅まで押しかけお願いし念願の版画展を開いていただいた。その個展は読売新聞の夕刊に1年間連載された町田康の小説『告白』の挿絵の版画297枚の展示というすごいものになった。畑中さんには毎日のように来ていただきファンサービスをしていただいた。お客さんたちはとても満足して帰って行かれた。その後も何度かご自宅に遊びに行かせてもらいビールをご馳走になっていると、あのつげ義春さんが買い物帰りの格好でふらっと寄られた。コーヒーを一杯飲みたくなってとおっしゃっていた。僕の横につげさんが座って美味そうにコーヒーを飲んでいた。ひとつふたつした僕のつまらない質問にとても丁寧に答えていただいた。大好きな二人の作家にかこまれて、なんとも幸せな時間をすごした。

畑中さんが、つげさんがいらっしゃるのは一年に一度かどうかで、三原さん運が良かったねとおっしゃっていた。このようなことを思い出しています。畑中さんありがとうございました。